ちょっと時期を過ぎちゃいましたけど、毎年紹介している新宿御苑のホオノキをお届けします。
ホオノキと言われて、大抵の人は聞いたことはないかと思います。朴葉味噌や朴葉焼きなどでおなじみの大きな葉っぱの木です。
ホオノキ(朴の木・厚朴)モクレン科
ホオノキって子供の頭ぐらいありそうな花を咲かせるのに、あまり目立ませんよね。それは、大きな葉っぱが茂ってるというのもありますけど、他の花のように一斉に咲かずに長期間にわたって少しずつ咲いていくからというのもあります。下の写真のように、蕾のものと咲いているものがいろいろとあるんです。
それはなぜかと言うと、ホオノキは自家受粉の危険を避け、他家受粉を行うからなんです。
一つの花の中に雄しべと雌しべが揃っているのですが、一つの花の中で受粉(近親交配)しないために、雄しべ期と雌しべ期があるので、少しずつ時期をずらして咲き、受粉の確率を高めているんです。
この話も毎年のようなんですけど、今年もやります。
ホオノキの花の1日目は雌性(しせい)期、つまり雌花としての花の役割をします。雄しべの方はかたく閉じていて、雄花としての機能は働きません
このときは大きく開かず、おちょぼ口の状態です。
先端の紫色の反り返っているものが雌しべです。
さっそく虫が花の香りに誘われて来ています。でも、蜜がないので虫たちのメリットは何もありません。無償の愛となります。
1日目の雌性(しせい)期が過ぎると、夕方から夜にかけて花が閉じます。実はこの夕方には両性具有状態。雌性期でもあり、雄性期でもあるんです。
そして2日目、晴れていれば花が開きます。
このときは、多数の雄しべが張り出し、花粉を旺盛に出しはじめます。雄性(ゆうせい)期の雌しべはぴったりと軸にくっついていて、雌花としての機能はしません。
雄性期が終わるとまた花が閉じます。そして翌日以降、大きく開きます。そして、雄しべがボロボロっと落ちていき、花びらと軸だけが残ります。
左が雄性期なので、まだちょっと閉じ気味、右はすべて終わって全開状態です。
大抵の人が「ホオノキが咲いてる」と気がつくのはこの時期の花だと思います。このようになるまでに3〜4日。天気が悪かったりすると8日ぐらいかかるそうです。
さらに過ぎると、花びらも落ち、軸だけが残り実が熟していきます。秋には真っ赤に熟し、中には種がぎっしりと詰まっています。
ですが、軸の多くは、秋に熟す前に足元にたくさん落ちてしまいます。花の数の10〜25%くらいしか果実にならないと言われています。
このように工夫を凝らしてもホオノキの自家受粉率は、5割から7割になるといわれています。蜜がないので、蜜を求めて飛び回る蜂などがよりつかず、花粉を食べるだけの虫が寄ってくるので、花粉を雄しべから別の花の雌しべへと運ぶ確率が低く、自家受粉してしまう可能性が高いようです。
他家(他花)受粉に比較すると、自家受粉によって実を結ぶ種子の数はとても少なくて、幼樹の生存率も低いとされ、成木にならずに、途中で枯死してしまう可能性が高いと言われています。
受粉の確率が低いといっても、人間の歴史に比べれば遥かに長い年月を生き残ってきているのですから、人間の心配するところではないんですよね。
このホオノキは落葉や根などから分泌される他感物質によって、他の植物の発芽や、発芽した植物の生育を強く抑制するので、次々と実って、次々に成長し、ホオノキだらけになると、森林としての植物の多様性や、植物のまわりで活動する虫などの生物の多様性も失われかねないので、自滅せず生き残り、共存共栄していくための絶妙なバランスを取っているのでしょう。
こちらは6月に最盛期を迎えるタイサンボク(泰山木)の花です。
ホウノキと構造は同じなので、同じような咲き方をするのではないかと思うのですが、この写真だと、雌しべが反り返っているのに雄しべが脱落しているので、違うのかもしれません。新宿御苑で6/6に撮影
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posted by ブドリ at 22:55
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花歩記 初夏の花
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