まぁ、こんなことを思った人はいないでしょうけど。
今日紹介するのは「クマガイソウ(熊谷草)」です。
前回に引き続き、源氏と平家にまつわる逸話を持つ花です。
21日(土)に皇居東御苑に行った時は開花まであと少しの状態。もう咲いただろうと24日(火)にこの花の撮影だけのために30分だけ寄り道して撮影しちゃいました。
クマガイソウ(熊谷草) ラン科
別名:ホロカケソウ(母衣掛け草)
袋状の唇弁を熊谷直実が背負った母衣(ほろ)にたとえて名前が付けられたものです。
まずは咲く直前と咲いたところを横からどうぞ。マウスを乗せて下さい。
天気が悪いうえに、ちょっと雑木林の下にあるので暗いので内臓ストロボを使っての撮影になりました。
マウスオン→クリックでごらん下さい。花の形がわかると思います。
クマガイソウと似た花にアツモリソウというものがあります。この二つは平家物語の敦盛の最期の話にちなんでいるんです。
一の谷の合戦で敗れた平家の武将たちは、岸から少し沖にはなれた船へと向かっていた。平敦盛も馬を海に入れ、沖の船を目指していた。その時、背後から呼び止めるものがいた。熊谷直実である。
「まさなうも、敵に後を見せ給ふものかな。返させ給へ」
と敦盛に言った。その言葉を聞いた敦盛はここで逃げ切ることもできた。それでも馬首を返し、熊谷との一騎打ちに応じた。しかし、歴戦の猛将熊谷と若干十六、七歳の平敦盛、勇敢に向かっていくが、熊谷にあっという間にねじ伏せられ、首をとられそうになった。熊谷は名ある平家の公達と首を切ろうとして、兜をあげてみると自分の息子とも見間違えるほどの青年武将。首をとることができなくなってしまった。
熊谷は子のある自分にはこの公達の父の悲しさもわかると、逃がそうとした。その時、後続の軍勢が到着し、他の者の手にかかるのなら自分が今討ち取ったほうが弔いもできる、と泣く泣くその公達の首をとる。
首をとった熊谷直実は、この公達が誰かわからなかった。首を包もうとしたとき、一本の笛を見つけた。鳥羽院から敦盛が授かった「小枝の笛」だった。この笛からこの公達が笛の名手であった平敦盛であると判明。
その後、熊谷直実は法然上人の下で出家し、敦盛のことを弔ったという。
この笛は現在「青葉の笛」といわれ、須磨寺にあるそうです。
源氏の白旗、平家の赤旗にちなんでか、がっしりした白っぽい方を熊谷直実に、優しげな姿で赤っぽい方を平敦盛にあてられたようです。
織田信長の好んだ歌『人間五十年、下天のうちをくらぶれば、夢幻の如くなり。一度生を享け滅せぬもののあるべきか』は幸若『敦盛』の一節。
残念な事に、クマガイソウもアツモリソウも栽培目的で乱獲されることが多いラン科の中でも、最も激しく乱獲、盗掘される種類です。栽培環境が非常に難しい植物であるため、歴史と同様滅び行く運命は避けられないものでしょうか。
熊谷直実も平敦盛も悲しんでいることでしょう。
「風にゆれ 熊谷草の ほろ苦く」
「熊谷草 歴史を包む 母衣纏い」
「母衣背負い 歴史を駆ける 熊谷草」
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【花歩記 いろいろの最新記事】
先日は色いろとお世話かけました。思いもよらぬ出会いとなっていくことに感激しています。感謝です。
クマガイソウは遠方深山のものとおもいきや皇居で見られるとは意外な穴場ですね。
亡き昭和天皇が植物学者であったことが幸いしているような気がします。
この2枚併せ葉がとても印象的なと思いますが鳩が胸を膨らませたような花の形も独特ですね。
歴史を紐解くような花が続いてくると見るもの全てがゆかしく見えてくるから不思議です。
先日は思いもかけない出会いで驚かれたことでしょう。これも何かの縁なんですね。
熊谷草はこんなところに?という場所にひっそりあるんですよ。
御苑内の二の丸雑木林は昭和天皇の意向が反映され、誰でも親しみやすくいろいろな植物を見ることが出来る素敵な場所です。それだけに見る人も大切に見て欲しいと思います。
熊谷草の由来については皇居にあると知ってから知ったんです。花から日本の歴史を垣間見ることも出来るというのも不思議です。花の奥深くを知るとさらに愛おしくなります。多くの人に共有してもらい、大切にする気持ちが生まれたら嬉しいですね。
>花から日本の歴史を垣間見ることも出来るというのも不思議です。
歴史と一緒に見るとまた違って見えますね。
巻貝に見えたり、人間の臓器(イメージ悪くてすみません)に見えたり…。
歴史のお話、とても為になりました。
いつもありがとうございますm(_"_)m。
私利私欲の為に、乱獲されてきたのでしょうか?
お話同様、悲しい気持ちになります(涙)。
とても不思議色とカタチの花ですね
初めて見ました
その珍しさから栽培目的で
乱獲されるのでしょうか?
人間は 己の欲のために
今まで どれだけの動物・植物を
滅びの道に送ったことでしょう…
守って 残して 伝える
忘れてはいけませんね
皇居にあるなんてビックリです。あちこちにある花ではないので貴重ですね。
歴史とともにいつまでも繫いでいきたいですね。
MAIさん
見る角度によって違って面白いですよね。
そうです、私利私欲ですね。
栽培が難しく増やすのが厳しいので採っていくんですよ。哀しいですよね。
海莉さん
やはり初めてですよね。そう見られる花ではないですからね。
珍しいので高値で取引されるから乱獲するんですよ。
今もどこかで絶滅させられている生き物がいるだろうと思うと罪深いものですね。